なんでも探検隊

ピアノの内部構造は一見複雑に見えますが、そのほとんどが1音に対する機能の集合体です。

全体のバランスを考えて、揃えていく作業は、季節により湿度、気温の変化の影響を受けやすいものです。

現代は空調環境設備が良くなったことにより、ご自宅でも快適にピアノをお弾きいただけるようになりましたが、エアコンの普及により、夏と冬の室温差は著しく大きくなりました。

基準ピッチの高低差も数Hz動きますし、全音域に渡り、音程も変化してしまいます。

音楽学校やホール、スタジオなどでは、基準音程を定められていますので、年間数回の調律が必要になります。

タッチに関しても、木材、金属材料は温度、湿度の影響を受けますので、年間通して一定ではありません。

皆様ご自宅のピアノに関して、少しでも多くご興味を持っていただき、良い状態を保って頂けるよう、調律師にどしどしご質問、ご依頼くださいませ。

   

それでは個人的意見満載の、ピアノ探検を始めましょう。

                                                                     

グランドピアノの屋根を開けるとき、突き上げ棒の角度はお気をつけ下さい!

屋根側には突き上げ棒の受け皿がいくつかありますが、長い突き上げ棒ほど奥の受け皿を使います。

これは屋根と突き上げ棒の角度を垂直にするためです。

ピアノの屋根は結構重いので、垂直が一番安定して安全です。間違った受け皿を使うと、ちょっとした揺れでも外れることがありますので、どうぞお気をつけ下さい!

ちなみに最近の国産ピアノについている受け皿は、以前の物より外れにくくするため、深い形状に変更されています

スタインウェイの溝切り部分は、しっかりしており安心出来ます。

真ん中の縦ラインから右が、次高音、高音と呼ばれる音域。左が中音域から低音へ。
弦の発音を区切る場所の部材が、左はアグラフ、右はベアリングで区切られています。
このスタイル以外にも全部アグラフのものも珍しくありません。弦を交換するときには、この部分の手入れや交換もします。
金色のフレームに印字されている番号は、弦の太さ指定です。No_17.5 が丁度1mm で、半番手ごとに 0.025mm サイズが変わります。
低音域は、軟銅線を巻いており、巻き方や太さ、本数の定義などもメーカー、サイズによって様々です。

右奥側の木の壁に沿って、フレームを止めてあるボルトが見えます。
これを点検する調律師は少ないかもしれません。

が、ご使用の期間が10年以上経ったもので、緩んでいないものは今までに見たことがありません。
メーカーごとに締め付けトルクの設定があるとは思いますが、公開されておらず、音や響きを聴きながら適正値を探るしかありません。

締めすぎると響きや伸びが止まります。

ずいぶん変化するので驚きますよ。

上から見るとこんな感じ。
響鳴板も、弦も綺麗ですよね。
お手持ちのピアノを是非、覗いて見てください。
もしも弦が錆びていたり、軽く触って汚れで粘ってたりしたら要注意。
また、響板の上の埃やカビはいかがですか?
ここに埃が積もると、折角の弦や板の振動を止めてしまいます。音色もくぐもった感じになり表現力は低下します。
結局のところ、この「掃除」こそ、最重要課題なのかもしれません。
掃除して、調律して、タッチ調整してその後、それでも揃わなかった音色を整える作業です。
ハンマーフェルト加工による整音作業という最終項目へたどり着くまで、なかなか長い道のりなのです。
調律の要、ユニゾン合わせも錆は大敵なのです。

ダンパー機構です。
普段は弦の上に乗っていて響きを止めていますが、鍵盤を弾いたり、右ペダルを踏むと上にあがります。
右ペダルを踏むと「音が伸びる」ということはよく知られていますが、実はただ伸びるだけではなく、弾いていない弦へも共鳴して響きを豊かにできるのです。
また、ペダルの踏み込み量によって、その響きの量もコントロールできますので、ペダルは音色を作れる大事なシステムなのです!

一般的には同時止音に調整しますが、タッチや響き量の関係で、低音から高音域までの運動始動位置を調整し、全体の止まるタイミングを操れます。弦の太さ、永さにより、音の止まる時間に差がありますので、見た目に揃っているだけではいけません。調律師冥利に尽きる微細な調整箇所です。

原因は色々あるとして、ピアノの弦は切れます。
緑の布の少し左側、弦が切れたので、切れた弦を外し、これから張るところなのです。
もしお使いのピアノの弦が切れたら、すぐに調律師さんへ連絡して即刻修理して下さい!
「弦が切れても音出てるからまだいいや」
とよく聞きます。
確かに音は出るのですが、これは弦があるつもりで叩こうとするハンマーにとってはえらい話で、切れたままで弾いているとハンマーの根本がグラグラになっていきますし、フェルトや軸も痛めます。そして残された弦も切れやすくなりますし、良いことはありません。

ご面倒とは思いますが、
【弦が切れたらすぐ連絡】
ここはお使いのピアノのために、ご理解、ご協力をお願い致します!

こちらは、YAMAHA Gシリーズの割と小さい機種の低音部分です。
2本張りと1本張りで、長さが稼げ無い部分を太さにより、柔らかく太い低音を鳴らすことが出来ます。

それでもやはり弦は最大限に長くしたいので、設計上、中音域の弦と交差しつつ、ボディの奥まで距離を確保しています。

全弦平行に張っているピアノに比べ、交差弦が多い小さなサイズのグランドピアノは、きちんと調律しないと音が濁りやすいです。

大きなコンサートピアノのほうが調律は素直で、やりやすいのです。

スタインウェイ フルコンサート D型 の低音弦部分です。
フルコンサートピアノの長い低音弦には、このように3本巻から1本巻までの仕様が多く、音量、倍音も豊かに響きます。
バランスの取れた長さや太さを考慮しており、調律も合わせやすいです。

コンサートホールなどには、設置してある楽器用の予備弦が準備されているところもありますが、無い場合も多いので、調律時の断弦に対応できるよう本来でしたら持ち歩きたいところですが、メーカー、機種ごとにそのサイズが違うので、実際は切れないことを祈るばかりです。

スタインウェィは比較的多く使用されることもあり、1台分の予備弦を準備して伺うようにしています。

張り替えそのものの時間は中音域から上の部分とさほど違いませんが、弦が太く長い分、音色が落ち着くまでには時間がかかります。

張弦作業後は数回手直しが必要になってきます。

とても珍しいケースのトラブルですが、ピアノの弦振動を響板に伝える、「駒」 の端っこが、フレームとわずかに接触している。

これは設計ミスなのか、私が気が付いた昨年辺りに響板の変化などにより発生したものなのかは不明なのですが、いずれにしても位置あわせが標準よりもずっと狭いのです。

これにより、中音部の最低音数本が、まったく伸びない。

これほどまでに部品間隔が切迫しているものは今までに見たことが無い。

というより、これほどの症状が出ないとまずチェックしない箇所なので、要注意です。

ピアノアクションを抜き出した、ピアノ本体右奥です
真ん中辺りに見えるのは、左のペダルから繋がっているレバーで、これにより、てこの原理で鍵盤アクション全体を右に移動させます。
ペダルを放したら戻ってくるのは、右端に見える板バネのおかげです。
この板バネの強さや位置を調整すると、ペダルの踏む重さも変わってきます。

シフトペダルは、普段当たっているハンマーの位置をずらすことにより、フェルトの柔らかい部分を利用した音色の変化を曲中で活かすことができるのです。

アクションを横から見た状態です。
ローラーの下に見える、ジャックとの縦位置、角度、隙間の調整により、ピアノのタッチはとても大きく変化します
逆に、この部分でそのピアノのタッチを左右するほど調整の幅が広い箇所です。

重い、軽いなどのタッチを指摘されることが多いですが、重量的なことより、摩擦や運動量により、タッチ重量を感じることも多いです。

フォルテが弾きにくい、連打がやりにくい場合なども、この部分の調整は欠かせません。

弦を叩くハンマーに繋がる、シャンク裏には、皮を貼ったローラーと呼ばれる部品が並びます。
新品でも弾きにくいし、経年変化ですり減ったり、形状がつぶれてしまっても影響が大きいです。
演奏上連打もしやすく、ダイナミックレンジを広く、レガートに演奏できるよう、細心の注意が必要です。

部品そのものは高額ではないので、材質の違いを楽しむのも面白いかもしれません。

本当にタッチの「肝」になる部分です。

しっかりチェックしていかないといけません。

ピアノの塗装は、しっかり硬いイメージがありますが、最近のウレタンのものでも、猫の爪くらいの硬さで傷がつきます。

居心地が良いのは判るのですが、直接乗せたままだと、傷もつきますし、外装はすべるので、猫の脚にも良くないですから注意しましょう。

かわいいからといって乗せ癖がつくと大変ですよ。

また、鍵盤や内部にも、抜け毛が入り込んで絡まったりしていることもございます。

私も含め、ほどほどに。

鍵盤を外していくと、中に見えるクッションの下に、紙が数枚入っています。

鍵盤はシーソーになっており、運動軸のバランス部分で、鍵盤高さ調整、押し込み下のフロント部分で、鍵盤深さを調整します。
この紙こそが、鍵盤の高さや深さを調整する重要な紙! なのです。
サイズや厚みもいろいろありますが、基準を定規でとった後は、目で見て、指先でなぞって、綺麗な一直線に揃うよう調整します。

埃に惑わされないよう綺麗に掃除してからはじめます。

鍵盤をゆっくり押し下げていくと、弦に近づき、残りどのくらい接近して落ちていくか。これは連打性や弾き心地に影響が出ることは勿論、音色にも多大な影響が出ます。
また、音量もずいぶん変わるので、要注意な調整箇所なのです。

近鳴り、遠鳴りともイメージが変わりますし、断弦の要因のひとつでもあります。音の伸びと、発音瞬発力の反比例もバランスをみていきます。

ハンマー整音作業をする際には、まずこちらから揃えてまいります。

ピアノを下側から覗きました。
一番目に付くのは、ペダル機構です。
調整箇所は比較的少ないのですが、年数が経過したピアノの雑音発生箇所としては、問題になることが多いです。
ペダル軸の雑音は頻繁にあるので、裏側を外して軸棒やカンザシと呼ばれる軸受けの交換、突き上げ棒とガイドのフェルト部分などの摩擦チェックは欠かせません。

パダル運動量の調整も、子供さんたちの足の小さい場合や、細かいペダル技術を要する曲とでは違ってきます。また、膝の悪い方や、お年を召した方などの場合、ペダル踏み込み重量を軽くしたりもします。

ステージはその向きにより音の伝わり具合や響きに影響が強く出るのが、キャスターの向きと設置場所です。

特に低音は、床を伝う振動方向や床材下の梁の影響も受けますので、置き場所は工夫が必要です。

ご自宅への設置の際、落ち着いた音、華やかで広がりのある音、それもお好みで、キャスター向きを利用します。

床材により変化も狭いお部屋だと特に影響されますので是非、自分好みのキャスター位置をお探し下さい。

ピアノの心臓部ともいえる、ハンマーです。

この部品が、鍵盤からの力を弦に伝える役割をしています。形状、硬さ、密度、そしてクッション性。

いづれも大切な条件で、音色、音量、その楽器の特徴となる大切な調整部分です。

使い込んだ楽器は、この部品画だけになることが多いですが、ある程度は整形、整音作業で交換はしない場合がほとんどです。

慎重に作業しないとダメにしてしまう危険な作業なのです。

グランドピアノと違い、仕組みの様々なところで部品材料を工夫して省スペースを作り上げられた逸品です。

バネを利用した反動力の補助や、鍵盤とアクションを垂直配列したり、グランドピアノとの違いはありますが、アップライトピアノも、本当によくできているなぁと、先人の知恵と努力に敬服です。

きちんと調整できていると、ショパンやリストは勿論、ラヴェルのような連打もこなせてしまうのです。 素晴らしい!

下に見えているのはアップライトピアノの鍵盤の木です。その先から上にのびているのは「キャプスタンボタン」といって、鍵盤で弾いた力をハンマーへ伝える大事なパーツです。
アップライトのキャプスタンは写真のようにワイヤーの先にボタンが付いているので、このワイヤーを前後させることで、タッチを調整することも可能です。季節(湿度)により敏感に変化するので、要調整ポイントです。基本は鍵盤からの動力をハンマーへ伝えるための角度、高さを合わせ、連打性、強弱の表現力を出せるよう調整します。

弦が駒という部材の上をまたぎ、その弦と響板の橋渡しをしている駒、そして駒と弦をしっかり密着させるための駒ピンが見えます。アップライトは縦型ですから、駒の上側と、駒ピン付近にホコリがたまります。駒ピン付近なんて、見るからにホコリがたまりそうですよね。この部分のホコリはピアノの響きにブレーキをかけます。 
音の好みは皆さまそれぞれですが、音色を好みに保つには、まずは各部のホコリや汚れを取って、ピアノの自然な音が出るようになってからです。
これは、喉がイガイガ、ガラガラしている時にうがいをするのと同じ事だと私は思うのです。

アップライトピアノのアクション部分を上から覗いたところです。

弦を押さえている白いフェルトと木材ブロックが「ダンパー」という部品です。
鍵盤は前後にシーソーのように動きますから、鍵盤を弾くと奥側が上がり、それに連動して、ダンパーが弦から離れます。また右ペダルを踏むと全部が一斉に弦から離れます。ここはグランドピアノと同じです。

違うのは、グランドピアノのダンパーは弦から上がったあとの止音は重力で下りるのですが、アップライトはバネの力で弦を押さえます。

このバネが結構強さがありますので、バネの反発の力が鍵盤を伝わって指にも感じられますから、良い弾き心地のためにはダンパーの調整が揃っていることがとても大事です。

このダンパーのバネ圧は基本的にはいじらない方が多いと思いますが、バネ圧が弱くなると止音が甘くなり、強すぎるとフェルトの痛みも早く、響きも出にくくなります。

「若干の」残響感っぽい響きを作ることも、調整次第で出来るのです。
ハンマーの弦への接近距離調整も、鍵盤の連打性、音の響き、音色の変化と、やはり影響が大きい調整箇所です。

アップライトピアノの裏側です。
一面に見えるのは響板、その響板の上に斜めにくっついているのが響棒です。
よく見ると、響棒は響板の木目の向きと垂直に付いているのがわかります。
音は木目方向に伝わりやすいので、こうすることで全体にムラ無く音を伝えて響かせるように工夫されているのです。この仕組みはグランドピアノも同じなので、グランドピアノの下にもぐって響板を裏から見ると、同じようになっています。

日本の住宅事情もあり、多くの場合、アップライトピアノは壁に寄せて置きますので、壁とピアノの隙間から色々なものが落ちて、簡単に取れる場所ではないのでそのままになっています。

その落とし物が原因でビリビリ共鳴していることもよくあります。
響板のこんな近くに落とし物があれば、ビリビリ共鳴が起こるのも納得ですね。

落とし物拾いや、響棒にたまったホコリの掃除のため、客さまのお宅ではピアノを前に引き出し、裏側の掃除をさせて頂きます。

時には大切な思い出の品や、小さい頃からのおもちゃなど、初めて伺うお宅では、何年も掃除をしていないことも多く、色んなものが発見されます。

綺麗に掃除すると、響きも音量も増すので、現代の住宅環境では好ましくないかもしれませんが、掃除してすっきりしたら、吸音材などを設置し、音量を抑えることも可能です。響きの多いお部屋などでは、吸音材の材質を検討し、部屋全体良い音色になるよう壁と、ピアノとの隙間をうまく利用します。

さてさて、生ピアノとは違いますが、電子ピアノの高位機種には、88鍵盤の1音ごとに、調律できる機能を持った機種もあります。

残念ながら1音ごとの調律(ユニゾン)は出来ませんが、それでもお好みに近づけることは可能です。

これにより、生ピアノとのアンサンブルでも、電子音との違和感がなくなり、気持ちよくアンサンブルできます。

但し、メーカー、機種により、設定方法がまちまちですので、慣れないと、生ピアノよりずっと調律時間が掛かってしまいます。

内部に関して簡単にご覧いただきましたが、いかがでしたか。

機能、機構の調整は、調律師によってもその意図は様々なうえ、調整の好みも違ってきます。

勿論標準寸法に添って作業を行うのが基本ですが、部品が消耗していたり、部材の歪みなどにより、そのとおりにいかない場合もございます。

古くて諦めていた、いつもやってもらっても良くならない、そんな駄目と思っている楽器こそ、最初から見直していくと、きっと弾きやすいタッチ、お好みの音色が見つかります。

是非ご自身のピアノのタッチなどを真剣に見直してみていただければ幸いです。

株式会社 おじまピアノ

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取締役社長 小島一路
(おじま・かずのり)
 
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